宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第55回宣伝会議賞 ファイナリストの論点 その1

煽り気味のタイトルで、いよいよ始まりました。
ファイナリスト作品を、個別に論評していきます。

 

私選主要賞の発表の前に、今日から3回(予定)は、
私選主要賞を惜しくも逃した作品の論点をいくつか。

 

なお、今のところは日陰者のブログですので、
作者に敬意を表しつつお名前は割愛致します

 

本日考えていく作品は・・・

 

名古屋まで2駅
大阪まで3駅

 

以下の2つの論点について考えます。

 

論点1.「品川区」のコピーとして妥当か?

品川駅の場所を考えると、問題なしとはしにくい。
でもここでは、妥当である可能性を考えてみます。

品川駅は品川区にはなく、区境からも微妙な距離が。
でも、「つながっている」ことは間違いないですよね。
そもそも、品川区が言う「交通が便利!」の中には、
品川駅の利便性も含まれているのではないでしょうか。

品川区はそれ単独で存在しているわけじゃないし、
区外との地理的な関係にも確実に影響を受けている
予想される「品川駅あるある」を憎むあまり(?)、
私は品川区を不当に「切り取って」しまっていたかも。
なんなら、港区とコラボしてもいいわけですしね。

品川駅経由で名古屋・大阪にまで視野を広げたこの作品、
その是非はともかく、学ぶべきところがありました。

この古典的名作問題を連想させますね・・・。
https://ddnavi.com/news/214672/a/

 

論点2.背景にある戦略は?

表現がチャーミングなのは、多くの人が認めるでしょう。
読む以前より、品川駅がちょっといいものに思えてくる。

でも、それだけなら、税金を投入して広告する価値は?

品川駅の名古屋・大阪へのアクセスの良さは、
誰にとってどんなメリットをもたらすのか?
また、その広告の、品川区へのメリットは?

例えば、こんな企業誘致の狙いがあったとしたら、
価値が変わってくる可能性があるのでは・・・。

 東海道新幹線沿いに支店や取引先が多い企業は、
 丸の内・大手町より、品川駅周辺に本社を。

まあ、実際には東京と1駅しか違わないんですけど、
あくまでも論点を理解するための例ってことで・・・。

 

一応、2つの論点に分けて考えて来ましたが、
この2つの論点は独立ではないと思うのです。

論点2の戦略の有効性が、論点1の妥当性を支持する
そういう可能性も、考えうるのではないでしょうか。

 

次の例は、もうここまで来ると屁理屈でしょうが・・・。

 上記の戦略により、まずはビジネス上のメリットを訴求
 加えて、品川区は、港区より、庶民に優しい(偏見?)
 住居費・生活費は安め、子育て支援や教育制度も充実。
 というわけで、社員にはぜひ品川区に住んでもらい・・・。

 社員想いの志ある企業と共に、品川区を、
 日本を代表する職住近接のモデル都市に。

 

ほら、品川駅のコピーが、品川区のコピーに!

 

そりゃまあ、屁理屈でしょうよ、ここまで来ると。
でもね、屁理屈と分かるのは考えた結果でしょ。
考える前から屁理屈と分かるわけじゃないはず。

職住近接は、品川区だけではないですけど、
既存の政策課題として実際にありますしね。

 

そんなことばっかり考えて、グランプリが獲れるかって?
いや、グランプリどころか、一次審査すら通りませんよ。
でもね、このブログのテーマは、「メタ宣伝会議賞なのです。

 

以前のブログで、こんな記事を書いたことがあります。

『コピーライティングの境界と限界』
http://adream.hatenablog.com/entry/2016/10/28/231208

宣伝会議賞にこういう視座を求めるのは、無理気味かも。
でも、それを切り離すのも、別の意味で無理気味のような。

 

グランプリから一次審査不通過までのピラミッド構造で、
宣伝会議賞は、コピーライティングを「切り取り」がちでは。
切り取らなければ、今の形で賞を運営していくのは難しそう。
が、切り取り方次第で、コピーの可能性が毀損されることも
「宣哲徒」としては、そこが気がかりなのです・・・。

 

明日(予定)は、ファイナリストの論点その2。

 

残りの2回は、今日よりは分かりやすいはず(予定)。
数少ない読者の皆様、なんとかついてきてください・・・。