宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 25.大和証券

「課題分析シリーズ」、第25回は、大和証券

 

◆あくまでも「背中を押す」

まずは、この大前提をしっかり確認したい。
「資産形成の必要性は感じつつも」ですよ。
資産形成の必要性を言っても効きにくい。

本課題では明示的に指定されていますが、
そうでなくても、「背中を押す」は、
コピーの重要な機能だと思っています。
ここについては、課題5の分析もご参考に。

 

◆ターゲットは?

投資をためらっている人全般でもいいけど、
その中の特定の人たちに絞るのもありそう。
マイナーになりすぎなければ、ですがね。
この方が、具体的なイメージは与えやすい。

 

◆なぜためらっているのか

「背中を押す」には、ここの理解が鍵。
オリエンのポイント1にヒントあり。

・何から始めればいいのかわからない
・まだ始めるタイミングではない
・投資にはリスクがある

この辺りが中心になるでしょう。
不労所得に対する否定的な考えも、
今でも残っているかもしれません。

 

◆アプローチは?

上記の理由それぞれに対応して・・・。

・何から始めればいいのかわからない
 「わからない」ってことは、「考えている」。
 「考えることをサポートする」感じでどうか。
 明示的に差別化は求められていないけれど、
 これならネット証券に対する優位性もあり。

・まだ始めるタイミングではない
 これに対しては、長期投資の有効性かな。

・投資にはリスクがある
 リスク自体を否定するのは妥当じゃない。
 投資先を分散してもリスク自体はあるし、
 それも踏まえてためらっているのでは。
 本課題との関連では、時間分散の効果かな。
 始めるなら早く初めて少しずつ、みたいな。

不労所得に対する否定的な考え
 これに対しては、投資の社会的役割とかかな。
 第53回のさわかみ投信にちょっと似た感じ。

分析の都合上、分けて考えてみたけれど、
実際には相互に絡み合っていそうですね。

 

◆エピソード化は有効か?

本課題における、エピソード化の有効性は?

まず、ポジティブ側かネガティブ側かの選択。
後者は、「資産形成の必要性」になりがち。
これは、エピソード以外のアプローチでも。
最初に検討した通り、これは効きにくい。
ここは、「北風」よりも「太陽」に期待
ネガティブ側は、「なし」ということで。

次に、「一人称/二人称/三人称」の観点。
あ、「時制」という観点も入れるといいかな。
「投資いいね」エピソードを作るとして、
いつの誰についての話なのか、という観点。

受け手は「ためらっている人」ですから、
「(疑似的な)一人称過去」ではない
自分の経験を投影して遠い目にはならない。
エピソードというより「つぶやき」ですが、
「年賀状は、贈り物だと思う。」とは、
この点で明らかに作用機序が違います。

「(疑似的な)一人称未来」ならどうか?
「よし、これから投資を始めるぞ!」的な。
うーん、ポジティブすぎて共感しにくい
理由に余程の説得力があれば別ですが・・・。

「二人称過去」は、自慢話になりそう。
共感しにくいという問題もあるけれど、
それ以前に、一般性が欠如しがちで、
証券会社の広告に使うには問題あり。

「二人称未来」は、説得力に欠けそう
「投資を始めることにしたんだ」ではね。

「三人称過去」は、成功モデル型ですね。
これは、広告としてはありだと思うけど、
宣伝会議賞話をでっちあげるのは問題

「三人称未来」は、未来を語る成功者。
うーん、これは目標が高すぎそう・・・。

エピソード化は、少なくとも私には、
成功するイメージが湧きません・・・。

 

◆「応援する」姿勢を

再びオリエンのポイント1からですが、
「サポートしたいと考えております」
この姿勢が伝わることも重要でしょう。
何かを指摘することも必要だとしても、
単なる「指摘」より「アドバイス」を、
さらに「応援」になっていればなおよし。

そう考えると、同じ「二人称」でも、
無理にエピソードを作るのではなくて、
企業側が何かを提案する言い方でどうか。

ここについては、課題22の分析もご参考に。

 

次回は、「26.大和リース」。