宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 31.東急建設

「課題分析シリーズ」、第31回は、東急建設

 

◆「当社の将来の姿」

まず、これだけでもかなりの難題ですね。

出題企業自らが将来を語るのであれば、
現在はまだその萌芽すら見えなくても、
意志さえあればいいと思うのですよ。
でも、企業の外側から提案するわけで。
「現在の姿」に何らかの根拠が欲しい
それをどう拡大解釈するかじゃないかな。

もちろん、結果的に企業が事後的にでも、
提案に沿った意志を持てばいいのですが、
応募する側としては無根拠ではね・・・。

むしろ、「将来の社会のニーズ」を基に、
「あるべき姿」を考える方が有効かな。
企業がそれを選ぶかはともかくとして、
一般公募らしいアプローチだと思います。

「企業の現在」と「社会の将来」を結ぶ
そんな提案ができれば非常に価値が高い。

 

◆「当社ならではの可能性」

オリエンにコモディティ化とある以上、
このポイントは最重要と考えておくべし。

 

◆「新たなゼネコン像」と「独自性」

上記の2つのポイントは、相互に関連が。
課題の主文言のキーワードで表現すれば、
「独自性を活かした新たなゼネコン像」

オリエンでは、東急グループの一員として」
「総合力を生かしたソリューション展開」
「独自性」の基盤ということになるのかな。
それを基に「新たなゼネコン像」を描け、と。

ちなみに、『会社四季報』によれば、
東急グループ関連からの受注約2割」
グループ内の仕事の比率は実は小さい。

ただし、オリエンが言っているのは、
グループ内部の仕事のことではなく、
グループ外部の建設ニーズに対して、
グループの総合力を活かした提案を、
そういうことの方だと思われます。

ここに限定されるのかは不明ですが、
コモディティ化」から脱するには、
有効な訴求点なのは間違いなさそう。

 

◆広告の目的は?

いまさらですが、ここを確認しておきたい。

オリエンによれば、ターゲットは、
「建設工事を発注するお客さま」や、
「業界を志望する学生の方々」
この文言を文字通りに解釈すれば、
媒体は業界誌を想定しているのかも。

ターゲットから想定される広告目的は、
受注と人材確保ということになります。
扱うテーマによっては、どちらか一方に。
出題企業としては両方狙いだろうけれど、
中途半端になって効かないよりはいい。

両者を含む社会一般へのブランド広告でも、
強く印象に残るものなら役割を果たせそう。

 

◆取り上げるテーマは?

正直、ほぼ渋谷絡みしか思いつかない
東急グループ」ともつながりますし。

その他では、安全とか環境とかかな。
でも、「独自性」につながるかは疑問。
そもそも、埋もれてしまいそうだし。

人材確保に絞るなら、働き方改革も。
ただこれも、やるべきことなんだけど、
「独自性」とまでは言えませんよね。

「将来の姿」という観点を重視するなら、
「技術研究所」の各種研究テーマは?
うーん、マニアックになりすぎると、
広告目的に合うかが怪しくなってくる。

「海外」や「宇宙」もそうなんだけど、
単なる紹介では提案価値が低そうだし。
出題企業自身がテーマを選べば済む話。


◆課題を言語化する課題

いくつかの企業広告の課題の分析では、
「サービス精神」を強調してきました。
が、本課題はちょっと違うような気が。

とにかく興味さえ持ってもらえれば、
あとは普通に説明すれば事足りるなら、
「サービス精神」重視でいいと思う。

一方、本課題で要求を満たすためには、
まだ表現できていないことを表現する
まずはそこが前提ではないでしょうか。
そういう意味では、課題18に近い。
「Shinka」は、解像度が・・・(以下略)。

大喜利でよければ、例えば「宇宙」なら、
剛力彩芽さんを起用することさえできれば、
"We choose to go to the Moon!"でいい。
でも、本課題はそういうことではなさそう。

 

◆課題27との共通性

同じゼネコンの課題ということもあり、
課題27の分析もぜひご参考にどうぞ。
もちろん、両企業の特徴は違いますが、
取り組むうえでのポイントには共通性も。

 

次回は、「32.東京ソワール」。