宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 47.富士通

「課題分析シリーズ」、第47回は、富士通

 

◆ポジティブ側かネガティブ側か

この点についての私の基本的な考え方は、
問題の認知度が低ければネガティブ側
問題の存在が理解されないと伝わらない。

じゃあ本課題はどうかと言えば、微妙。
判断の根拠を説明できないというのは、
AIに関するメジャーな論点のひとつ
何となく聞いたことがある人が多そう。
でも、いきなりお茶の間にCMが流れて、
一般の人が即座に理解できるかは怪しい

とはいえ、問題を否定的に描くだけでは、
解決策のイメージが湧きにくんじゃないか。
本来はポジティブに解決策の側を描きたい
が、やってみると、これが難しいんですよ。

通常のAIの問題を描かざるを得なさそう。
その上で、解決のイメージを与えられるか。

 

◆AI自体を否定しない

根拠の説明と推定の妥当性とは別問題
通常のAIが重大な過ちを犯すシーンを、
おどろおどろしく描くのはいただけない。
Zinraiの活用の可能性を広く伝えるよりも、
AI一般の活用を妨げる懸念の方が大きい。

もちろん、過ちの可能性はあるのですが、
人間なら過ちを犯さないわけではもない。
専門家が『Zirai』と協働した場合でも。

「根拠の説明」にフォーカスするためにも、
推定自体は妥当な場合を例にした方がいい。

 

◆『Zinrai』の思想

「説明可能なAI」という特徴だけでなく、
背景にある思想も頭に入れておきたい。
鍵になりそうな文言を拾ってみました。

 人と協調する、人を中心としたAI
 人の判断・行動を"スピーディ"にサポートすることで、
 企業・社会の変革を"ダイナミック"に実現させる

何となく「非人間的」と思われがちなAIを、
人間による意思決定のサポート役と位置づけ、
AIの適用領域を拡大していくということかな。

ここを表現するのが難しいのですが・・・。

 

◆スルーされないように

出題企業が現段階で想定している主要適用分野は、
「ヘルスケア、金融、コーポレート」とのこと。
この分野での適用シーンを描くのが正攻法かな。
難しめの課題だし、特殊な発想は分かりにくいかも。

ただ、あまりにも都合のいい作り話はねえ・・・
頑固社長が「AIは信用できん!」とか言って、
専門家が出てきて判断の根拠を提示したら突然、
「おお、それは安心だな!」みたいな感じの。
そういうCM、割とよく見かける気がしますが、
見れば見るほどうさんくさいイメージが・・・

オリエンにも「目立つ、面白い」とありますし、
そうじゃないものへの挑戦も見てみたいです。

 

◆AIへの態度

人間とAIならAIの推定の確度の方が高い、
そういう領域は、今後ますます増えていきそう。
でも現状では、なんとなくAIは信じにくい
だからこそ、『Zinrai』なのでしょうが・・・。

今回の課題からは外れるかもしれませんが、
人間のAIに対するその態度は合理的なのか?
人間が推定して説明すればそれでいいのか?
合理性だけで割り切る必要はないと思うけど、
そもそも何を拒絶しているかを見極めることで、
新たなAI観や人間観が生まれるかもしれない

人間には想像困難な仮説をぱっと見せてくれる
私は、AIのことをそういう風に捉えています。
その可能性を最大限に活用するために何が必要か?
そんなことまで考えさせられる課題でした・・・。

 

次回は、「48.三井製糖」。