宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

課題分析 9.キッコーマン

第55回宣伝会議賞課題分析シリーズ、第9回は・・・

 

9.キッコーマン
国境を超えておいしさの出会いを広げ続ける
キッコーマンの企業広告

 

まず、課題のターゲットを確認します。
「海外の人」ですよね。ですよね?

前回の課題は、テーマは「世界」でも、
ターゲットは日本の消費者だったはず。
また、前回の「広げ続ける」に対して、
今回は「まだ知らない」と、焦点が違う。

実は、複数の他の応募者のブログ等で、
課題の趣旨を誤解しているんじゃないか
と思われる記述を見かけました。

たしかに、ターゲットが「海外の人」って、
宣伝会議賞への出題としては不自然な気も。
が、どう考えても、他の解釈の余地はない

 

なぜ、こんな誤解が起きてしまうのか?

 

応募者側の要因として考えられるのは、
広告目的の意識が欠如していることでは。
「起こす」より「言う」に躍起になりすぎ。
何か関係することをそれっぽく言っちゃいがち。

ただ、企業側にも改善の余地はありそう。

実は、課題の主文言は前回とほぼ同じ
(なぜか「こえて」の表記と読点の有無が微妙に違う。)
広い意味では「テーマ」は同じだとしても、
「課題」は違う表現にするべきだったのでは。

ちなみに、第53回のキッコーマンの課題では、
「日本人に向けてでも、世界に向けてでも」、
という曖昧なターゲット設定がありました。

結果的に、SKATの一次審査通過作品には、
明らかに「世界に向けて」は見当たらず。
(企画意図を読んでいないからかもしれませんが。)
これもいい出題の仕方ではなかったと思います。

 

さて、今回の課題に戻って・・・。

 

まず、英語で出すべきかどうかですが・・・。

課題の趣旨に従えば、日本語では無効ですよね。
本来は、英語(あるいは他の外国語)で出すべき。
『達人道』でも、英語の案を出していました。

が、そこがオリエンで明示されていない上に、
宣伝会議賞だということを考えると(妙な考え)
翻訳可能であれば日本語でもよし、なのかな。

むしろ、英語の案がどう審査されるかが不明。
私は、拒絶すべきではないと思っていますが。

日本語固有のダジャレやレトリックは不可。
「外国」「外国人」等の表現にも注意。
海外での使用を想定しているわけですから。

 

次に、ターゲットをどう捉えるか

「100カ国以上で販売」されているとはいえ、
今回は「まだ知らない」人がターゲット。
「しょうゆリテラシー」は、ほぼゼロを想定。

 

では、広告の目的をどう設定するか

しょうゆになじみがない人が相手ですから、
抽象的すぎると読んでもらいにくそうだし、
読んでもらえてもすぐに忘れられそう。

検索してもらうとか実際に試してもらうとか、
それくらい具体的な目標があった方がよさそう。

 

じゃあ、どんなコピーがいいのか?

もうこの際、「しょうゆ」とか「日本」とか
はっきり入れちゃった方がよくないですか?
効くかどうか、ということを中心に考えると。
宣伝会議賞での評価はともかくとすれば。

 

CMについては、ラジオの場合はやはり、
翻訳可能かということが問題になりがち。
設定も分かりやすくないと通じにくそう。
そうなると、テレビが有利に思えますね。
コピーは普通でもいいわけですし。

 

海外で実際に出稿されたらどうなるのか
そこを少しでも想像できたかどうかが鍵。

 

明日は、「課題10.キッツ」。