宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

課題分析 18.コンカー

第55回宣伝会議賞課題分析シリーズ、第18回は・・・

 

18.コンカー
「経費精算する=コンカーする」となるようなアイデア

 

まずは、課題の主文言の解釈ですが・・・。
いわゆる「競合」は考えなくてもよさそう。
むしろ、ここでの競合は「手作業」でしょう。

システムの導入さえ決断してもらえればいい。
システム未導入の企業が主なターゲットですし、
「売上1位」が効きそうなジャンルでもある。

 

では、この課題で求められることは?

 

私は当初、課題の内容から総合的に考えて、
「社会的気運の醸成」だと確信していました。
その結果として、責任者に決断を促す、と。
が、オリエンでは意外にもそこは明示されず。
目的よりも背景の説明を優先しただけなのか、
そもそもそういう狙いではなかったのか?
多少確信が揺らいでいますが、上記の線で。

 

課題で挙げられている参考図書には、
コンカーの事例も記載されています。
そのまとめの部分を、以下に引用。

 

 コンカーは、「年間1兆円のムダ」というわかりやすいデータを用意し、
日本CFO協会などの第三者と組むことで、まずは社会問題として
「いかに日本の経費精算が遅れているか」というパブリシティを最大化させた。
 さらにその露出が、経費精算に対するパーセプションを変化させる。
「習慣化している事務処理のささいな話」が、「企業の生産性向上への近道」や
規制緩和の優先課題」へと変わっていった。
 その結果、ビヘイビアチェンジが起こる。政府は規制緩和に動き、
企業はコンカーのシステム導入に動いたのだ。

 

戦略PRにより、世論を、政治を動かした。
そういう企業からの出題です。念のため。

 

企業ウェブサイト等を見ても分かる通り、
訴求のための個別的材料には事欠かない
「生涯52日」等の調査結果も然り、
多数の企業の具体的な導入事例も然り。

というわけで、最も価値が低いのは
「事務処理のささいな」作り話では。
特に、宣伝会議賞っぽい、へらへら系
事実があるのに、作る必要がないし、
これまでの積み上げがまったく活きない。

 

SKATに載りそうなダメコピーの例は・・・

経理部門が飲み会に来てない/来てる。

経理が忙しい/楽になった、と言うのなら、
事実を基にした方がよほど伝わりやすい
正体不明の企業の作り話はどうでもいい。
飲み会に出席するためのシステムでもない。
そもそも経理部門だけの問題でもない。
社会に広く訴えることからは程遠い

 

参考図書の鍵となる表現を拾っておくと・・・

社会関心をいかに「料理」するかという発想。

そのための「6つの法則」として・・・

・「おおやけ(社会性)」
・「ばったり(偶然性)」
・「おすみつき(信頼性)」
・「そもそも(普遍性)」
・「しみじみ(当事者性)」
・「かけてとく(機知性)」

応募作でコントロールできるかはともかく、
親和性ぐらいは考えてみてもよいかと。

なお、最後の「かけてとく(機知性)」は、
上記の例みたいな宣伝会議賞っぽいのじゃない。
わざわざ簡単なことを面倒にするんじゃなくて、
「やられた感」がある、という意味のようです。

宣伝会議賞という場と課題の性質を考慮して、
上記6つの法則を私なりにまとめてみると、
「おおやぶっちゃけ」になるのですが・・・。

 

そのコピーをチラシに載せたとして、
導入判断の責任者に手渡ししたいか
そういうイメージで判断してみては。

 

CMは、どうもイメージが湧きにくい。
問題や利点の散漫な描写になりがち。
人が決断を下す、その要因は何なのか
説明よりも、その核心に集中を。

 

コンカーにとって、宣伝会議賞への出題が、
どうか戦略上の汚点になりませんように。
宣伝会議賞も、大恥をかきませんように。
意識の高い審査員に担当してもらいたい。

 

明日は、「課題19.コンチネンタルタイヤ・ジャパン」。