宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第55回宣伝会議賞 私選主要賞 主要四賞編

私選主要賞、今日は、主要四賞編

 

イグ眞木準賞

ラーニングシューズ

これ、本当は「ラーニング」ではなさそうです。
技術の形容詞として「ラーニング」と言えば、
「入力への適応度が上がっていく」ことのはず。
課題の技術は、適応度が上がるわけじゃない。
入力(接地)に応じて出力(反発性)が変化、
すなわち、アダプティブなのであって。
もちろん、「ランニング」に掛けたのでしょうが。

それでもこの作品、夢を見せてもらったような。
というわけで、「イグノーベル賞」になぞらえて、
私選「イグ眞木準賞」を贈り、挑戦を称えます

実際の審査で、こういうのをどう処遇するかは難しい。
事実認識が微妙にずれている作品、他にもありました。

なお、「くんくん」は、取り消しとは関係なく、
課題解釈重視派の私には、元々選びにくかった
課題の性質上、それなりの普遍性が欲しかったし、
 「キレイな素の自分に戻ってリラックス」
とのつながりは必須だと判断していたので。

 

CMゴールド

該当なし

ファイナリスト、協賛企業賞を見る限りでは、
CM部門は低調だったという印象は否めない。
いいコピーありきの課題が多かった影響かも。
ただ、応募作全体が低調だったのかは疑問

前回、CM部門の一次審査通過作品数が激増。
が、それで平均点が下がったわけじゃなかった。
むしろ、例年より平均点は高かった印象すら。
今回、逆に一次通過作品数が激減したことで、
残るべき作品が残らなかった可能性も。

常連さんたちの「マイ・ベスト」の作品は、
本当にファイナリスト作品よりダメなのか?
常連さんの実力と、審査員の眼力、疑うべきは?
私は迷わず、審査員の眼力の方を疑います

 

コピーゴールド

お客さま、このままだと、
いいお客さんですよ。

これはもう、「目から鱗」という表現がぴったり。
そうか、キャッチでは、保険の話はいらないのか。

 

準グランプリ

現金なんて、お金の無駄づかいだ。

第一印象では、正直、ちょっと抵抗がありました。
でも、見れば見るほど、可能性を感じるように。
「クレジットカード観」の上書きを目指すこの課題、
現金派の一番の気がかりが「無駄づかい」とすれば、
そこを真っ向から上書きしようというアプローチ。
非合理的習慣を変えうるのは、こういうコピーかも。
ゴールドでは過小評価と判断し、「準グランプリ」に。

 

さて、いよいよ、「現金なんて」の猛追を振り切り、
ADreamグランプリの栄冠に輝いた作品は・・・。

 

グランプリ

魚の生肉を、刺身にしたのは、しょうゆです。

私の中の宣伝会議賞グランプリの基準として、
「(広告的な)驚き」を重視しています。
それにしては、派手さがないと思われるかも。
でもこの作品、秀逸さの水準が驚きなのです。

「魚の生肉」という、海外の人にとっては、
今でも少なからず抵抗がありそうな食材が、
海外でも人気のある「刺身」に早変わり。
その端的な事実に立脚した説得力の高さ

余計なレトリックに走らなかったのもいい。
この課題の分析で、私はこう書きました。

 もうこの際、「しょうゆ」とか「日本」とか、
 はっきり入れちゃった方がよくないですか?

そう、この課題は、これでいいんです。

全課題に応募し、課題分析も書いた者として、
課題解決の姿を想像しにくかったこの課題で、
一般的過ぎず特殊過ぎず、近すぎず遠すぎず、
実効性ある明確な答えを提示したことを評価。

刺身を食べるとき、しょうゆの存在感が増しそう。
刺身を梃子にしょうゆを持ち上げた鮮やかさ。
作者に心からの拍手を送り、その栄誉を称えます。

 

さて、予定の3月末までに終わるか微妙ですが、
休眠まであと数回、どうかお付き合いください。