宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 8.霧島酒造

「課題分析シリーズ」、第8回は、霧島酒造

 

◆そのままじゃダメですか?

課題を見たときに、最初に思ったのがこれ。

一旦、宣伝会議賞での評価はさておくとして、
本格焼酎は、糖質ゼロ・プリン体ゼロ。」
これ自体をキャッチフレーズにしてはどうか?
企業が課題に込めた意図を理解するには、
そういう比較をしてみるのも有効では。

じゃあ、そのままじゃ何が足りないのか?
きっと、「もっとチャーミングに」でしょう。
「品質をときめきに」霧島酒造さんですし。

 

◆「ゼロ」そのままとセットで

本格焼酎は、糖質ゼロ・プリン体ゼロ。」、
これはそのままボディーに入ると想定したい。
だって、これを入れない手はないでしょう。
怪しい作り話とは、説得力のレベルが違う。

じゃあ、キャッチでは何をすればいいのか?
「体にうれしい」の単なる言い換えではなく、
「ゼロ」に引き込み「ゼロ」を印象に残す
そんな役割を果たすキャッチの方が効果的。

 

◆「単独で分かる必要」は絶対か?

「作品意図を読まなくても分かる」ことを、
多くの審査員が必要条件と考えているらしい。
が、私はこれに、強い疑問を抱いています。

「分かる」の意味は分かっているのか、
そもそも、そこからして怪しいのですが、
ここでは「文脈上の意味が分かる」かを。

受け手は作品意図を読むわけじゃない。
それが上記の考えの大きな根拠でしょう。
でも、その根拠を作品意図に適用するなら、
課題やオリエンにも適用するべきですよね。
受け手は課題もオリエンも読んでいない。
では、課題すら読まずに分かる必要が?

もしそうなら、上記の「セットで」は無効か、
あるいは、可能性の幅がかなり狭くなりそう。
じゃあ、「セットで」は妥当じゃないのか?
うーん、私にはそうとは思えないのですが。
キャッチフレーズ単独で応募・審査する、
宣伝会議賞に限っての話、ってこと?
でも、賞の都合で機能を劣化させてもねえ。

 

◆他の種類のお酒との比較

「ゼロ」そのままはなんだかねえ、となると、
他の種類のお酒をけなしてみたくなるかも。
が、それをやるとどうなるか、考えてほしい。

例えばビールなら、「ビールはダメ」を言うと、
本格焼酎「ダメじゃないもの」になるのでは。
「おいしくて健康的で素敵なもの」じゃなくて。

上記の最初のポイントに戻って考えてみると、
「糖質ゼロ・プリン体ゼロ」そのままだと、
「体に悪くないもの」になってしまうような。
出題企業はこの辺りも気にしているのかも。

 

◆「宣伝会議賞だから」の功罪

実務では出にくいものが出る宣伝会議賞
ということになっている、宣伝会議賞
が、それは何らかの価値を生んでいるか?

表現の工夫とか、キャッチ単独でとか、
宣伝会議賞ならではの諸条件の影響が、
逆にコピーの可能性を毀損していないか?
目先の結果や審査や運営に気を取られて、
自分で自分の首を絞めていませんか?

宣伝会議賞のための宣伝会議賞」では、
わざわざ開催する意義がないと思うのです。

 

次回は、「9.グルメ杵屋」。