宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 10.クレディセゾン

「課題分析シリーズ」、第10回は、クレディセゾン

 

◆出題の意図

この課題を見た当初の私の解釈では、
ポイント運用そのものの利用拡大より、
それを「てこ」にカード決済を増やす
それが真の狙いだと考えていました。
実際、そういう狙いは背景にありそう。
出題以前に、サービス導入の背景に。

が、オリエンでは触れられていませんね。
これはおそらく、次のような理由から。

ポイントの増減が日常的に気になりだすと、
そもそも、日常的にカード決済を選べば、
自動的にポイントが増えるな、と気付く。
サービス自体がそういう仕掛けなので、
サービスの利用を拡大しさえすればよく、
広告でその先まで踏み込む必要はない

そうならば、よく設計されたサービスだし、
「真の狙い」はあまり意識しなくてもよし。
でも、あえて意識してみるのもありかも。

 

◆投資そのものに寄り過ぎない

投資それ自体にも魅力はあるとしても、
実際の投資でも言える魅力では落第点。
それで人が動けば大和証券の出題は不要。
あくまでも「ポイント運用」固有のものを。

 

◆サービスの背景と現状

参考になるウェブページを挙げておきます。

https://moneyzine.jp/article/detail/215388

応募期間中に、「株式コース」が追加。
ただ、対象企業は限定的なので注意。

 

◆「ポイントだから気軽に」の是非

実際の投資との違いは、まずはここでしょう。
オリエンもここがポイントになっているし、
多くの人にはこういう心理はありそうです。

ただ、それって本当に合理的な考え方かな?
実質的には金銭的価値があるわけでしょ。

もっとも、「損しない」ことに縛られすぎの、
多くの日本人の投資に対するスタンス自体が、
そもそも合理的かという問題もありますね。

それに、心理的な楽しさは無視できないし。

非合理的な考え方自体を主張するのではなく、
総合的に考えて受け手が幸せになる提案を。

 

◆増える保証はない

必ず増えるかのような印象のものは不可。
長期運用なら増える蓋然性は高いとしても。
「増やせる」/「増やしてみよう」ぐらいで。

実質的に投資の話ということになるので、
他の課題以上に怪しい作り話は避けたい。
出題企業もそういうのは選ばないはず。

 

◆再び「単独で分かる必要」問題

課題8の分析でも検討したこの問題。
この課題の場合はどうでしょうか?
ポイント運用の話と知らずに読んで、
単独で分からなければダメなのか?

私は、まったくそうは思いません。
「ポイント運用で疑似投資体験」とか、
サブキャッチを入れればいいだけの話。
続きは、ボディーコピーかウェブで。
企業名と商品名/サービス名だけでなく、
何も特別な工夫を必要としない要素は、
セットで入ると想定してもいいと思う。
その方が、いいキャッチが作れそう。

 

◆さらに「単独で分かる必要」問題

では、今回の課題に対する優秀な応募作が、
前回の課題に対して応募されたとしたら?

ポイント運用体験がカード決済を増やすなら、
今回の応募作は前回の課題でも通用するはず

でも実際は、出題の仕方に影響されそう
前回なら落ちて、今回なら残るとか。
「コピー単独で分かる必要がある」、
そう考えている審査員が審査しても。
課題8の分析でも指摘している通り、
課題やオリエンも作品意図と同様に、
受け手は読んでいないにもかかわらず。

実際、前回の一次審査通過以上の作品では
ポイントのことかポイント運用のことか、
微妙なものが1本だけあるのを除けば、
ポイント運用を扱ったものはなさそう。
オリエンで触れられているのに、ですよ。

応募が少なかったのか、残らなかったのか。
後者だとして、審査員が選ばなかったのは、
「単独で分かる必要がある」に反するからか、
あるいは単にオリエンを読んでいないからか。

いずれにしても・・・、もったいなさすぎる。
せっかくの企業努力を反映できていないわけで。

これは決して、例外的な事態ではないはず。
多くの人がまだ知らないような訴求点なら、
一般的に当てはまるような問題でしょう。
オリエンで触れられていてもこうですから、
オリエンにない情報の場合は推して知るべし。

 

◆「単独で分かる必要」の起源

私は、「コピー単独で分かる必要がある」は、
過剰に一般化された結論だと考えています。

では、なぜ過剰な一般化が起きてしまったのか?
これについては自分なりの仮説がありますが、
それを書くには余白が狭すぎる、ことにします。

でも、このブログが寿命を迎えるその日の前に、
なんとか書き記しておきたいとは思っています。

 

次回は、「11.工学院大学」。