宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第55回宣伝会議賞 ファイナリストの論点 その2

『ファイナリストの論点』、2回目です。

 

本日考えていく作品は・・・

 

AIから仕事を奪ってください。

 

論点.作品意図を読まなくても「分かる」か?

えっ、この作品のどこが意味が分からないの?
そう思われた方も多いのではないでしょうか。

いや、私だって、いわゆる「意味」は分かりますよ。
人工知能よりいい仕事をしてみせてくれ、ですよね。

私が言っている「分かるか」は、そこじゃなくて・・・。
「妥当性や有効性が分かるか」、と言えばいいのかな。

 

「作品意図」(旧「企画意図」)については、
以前のブログで、かなりこねくり回した記憶が。

「作品意図を読まなくても分かることが必要」
と、多くの審査員が考えているらしいけれど、
そもそも、「分かる」の意味は分かっているのか?
が、『「分かる」の意味は分かっているのか』という、
その問いの意味が、自分でもよく分からないままでした。

要は、漠然とした疑問を強く感じながらも、
問いを明確化できていなかったわけですね。
今回、その疑問の少なくとも一部が、明確に。

 

では、作品に沿って考えていきましょう。

「AIから仕事を奪う」の標準的解釈は、こんな感じか。

「現在はAIに任せられているある種の仕事を、
人間がより優れた仕事をすることで代替する。」

こう解釈するとして、私が分からないのは・・・、

その「ある種の仕事」とは、例えば何だろう?

人間よりAIが向いているからAIなのでは?
人間はAIにはできないことをやればいいし、
そもそもAIを開発するのも人間だし・・・。

と疑いつつも、そういう「ある種の仕事」が、
絶対にないとは、私にはとても言い切れない
それに、あったとしたら、価値は極めて高そう。

とはいえ、「ないとは言い切れない」だけでは、
有効性を積極的には評価しにくいですよね。

 

この点について作品意図の助けが必要だとして、
それでダメかと言えばそうじゃないと思う。
想定されるボディーコピー等との関係を踏まえて、
キャッチフレーズが主役級の働きをしていれば。

それに、私や審査員が分かる必要はないでしょ。
ヤフーに採用されうる、優秀な学生が分かれば。
少なくともこの課題については、私はそう考えます。

ただ、そこを私なり審査員なりが評価する上では
作品意図を参照した方がいいんじゃないですか、と。

 

「妥当性や有効性」は、本作の評価に直結しそう
でも、キャッチフレーズ単独でそこまでは無茶
そこが「分からない」で落とされなくてよかった。

 

ただ、そもそもこの作品、「分からない」のは、
今のところ、どうやら私だけのようなのです・・・。

 

「作品意図を読まなくても分かる」という考えが、
いわゆる「意味」が分かることを言っているのか、
「妥当性や有効性」が分かることを言っているのか、
私には、区別されてきたとは思えないのですよ。

その結果、残るべき優れた作品が落とされたり
検討されるべき論点が検討されなかったり
そういうことは、頻繁に起こっているのでは。

 

私の現時点での結論をまとめておくと・・・、

 

作品意図は、妥当性や有効性の検討に有用でありうる。

 

明日(予定)は、ファイナリストの論点その3。

 

次回の論点が、一番関心を持ってもらいやすそう(当社比)。