宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 15.沢井製薬

「課題分析シリーズ」、第15回は、沢井製薬

 

◆現在の企業イメージ

これはきっと、課題にある通りでしょうね。
高橋英樹さん」ジェネリック医薬品
「あなたや若い方々」も、そうでしょう。
「そこから受ける印象は」と問われれば、
何か答えようと思えば答えられるとしても、
実際にはそれ以上の特別な印象はないのでは。

 

◆「変える」と言うより・・・

ジェネリック医薬品沢井製薬」ですから、
ジェネリック」という認知はそのままでいい
じゃあ、高橋英樹さんを変えるのかと言えば、
まあ、若い人向きではないとは思いますが、
そこが問題の中心ではないような気がします。
高橋真麻さんにすればいいって話でもないし。

上記の通り、特別な印象がないのだとすれば、
「変える」ではなく「加える」と考えては。
現状のイメージを否定するというよりは、
それも含めて何かを足して再定義する感じ。

もちろん、その再定義の結果によっては、
新イメージキャラクター起用の可能性も。
そこを宣伝会議賞で考えるかはともかく。

 

◆再定義の方向性

ジェネリック」と言えば、まずは安さ。
でもそれは、多くの人が知っているはず。

じゃあ、出題企業は何を足したいのか?
「安さだけじゃない」と言いたいのでは。
安さゆえに一段低く見られがちなのかも。
その「安さだけじゃない何か」の部分を、
どう言語化するかがこの課題の鍵でしょう。

 

◆既存のメッセージの確認

実際、そういう言語化の努力はなされています。
企業ウェブサイトからいくつか拾ってみました。

まずは、企業スローガンの、「なによりも患者さんのために」

次に、ウェブサイトのバナーに出てくる、これ。

 「ひとつ上の品質」を「ひとりでも多くの患者さんへ」

 沢井製薬が考える、ジェネリック医薬品
 それは、確固たる安全性はもちろん、
 より飲みやすく、より扱いやすく ――
 全てにおいて、ひとつ上の品質を誇るもの。

テレビCMでは、「安定供給」篇「製剤工夫」篇

この辺りで、方向性はつかめると思います。
あとは、どれだけ印象に残せるかでしょう。

ちなみに、「広告ギャラリー」の新聞広告は、
ぶっちゃけ、読んでもらえないと思います。

また、オンエア中のラジオCMの中では、
社員が語っているものは素朴でいいとして、
他のものは作った感じが強すぎませんか。
おもしろくする必要はまったくないけど、
わざわざ胡散臭くしてしまっているような。

 

◆虚偽厳禁

製薬会社ですから、怪しい作り話は厳禁
まあ、本来は他の課題でもダメですけど。
例えば、こんな感じの・・・。

 薬を変えた。人生が変わった。

そもそも、人生がどう変わったのか不明だし、
薬を変えたら効くことは実際にあるとしても、
特殊な例を恣意的に持ち出しちゃダメでしょ。
怪しい宗教の勧誘の人が作りそうなコピー。
そんな広告を出す企業を信用できますか?
また、なぜそういう口調なのかも謎すぎる。
誰がどんな状況でつぶやいているのか?

 

◆やさしさが伝わるものを

課題12の分析では、企業広告の課題について、
「目的を達成する大喜利」を肯定しましたが、
製薬会社となると話は違ってきそうですね。
笑えるおもしろさより、心安らぐやさしさを。

 

◆作品意図

この課題ですら「魅力を表現しました」では、
作品意図の欄がある意味がなくなりますよね。
協賛企業には「リサーチに使える」としつつ、
応募者に対しては「空欄でさえなければ」では、
協賛企業の数と応募作品の数を増やすための、
主催社の二枚舌ではと疑われてもしょうがない。

最初に書いた通り、企業への印象の方は、
想像通りのことしか出てこないのかも。
でも、狙いの方はちゃんと書いてほしい
作品から伝わればいいんだろうけど、
ひとつの作品から読み取りうる狙いは、
一通りとは限らないんじゃないかな。
「より大きな広告展開の一部として」
みたいな提案もありうるわけだし。
それに、どう変えようとしているかが、
自分の中でより明確になりますしね。

 

次回は、「16.サンゲツ」。