宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 14.サマリー

「課題分析シリーズ」、第14回は、サマリー

 

◆具体的な用途ありき

「実際に使ってもらえるような」の解釈は?
言われなくても、本来はそういうものでは?
一般論としては、目的を達するコピーにも、
いろいろな種類があると思っていますが、
この課題においては、何が機能するのか?

出題側がこの文言に込めた意図としては、
まず、「単なることば遊びではない」かな。
単に認知度を上げることが目的じゃなくて、
便利さを受け手の自分事にしてほしいはず。
また、「具体的な用途を」のニュアンスも。
それが一番よく便利さが伝わりそうですしね。

 

◆キャッチフレーズに入れる訴求点

ほぼ「部屋が片付く」限定のような。
使う動機は、まずそれじゃないかな。
実例を提示してそれを想像してもらう。

スマホで管理」ヤフオクは、
それも知ってほしいことではあるけど、
サービス未利用の受け手に対して、
実際に効くかどうかは疑問ですね。

例えば、ダイレクト型の自動車保険で、
保険料だけで決めるわけじゃなくても、
乗り換える動機になるのは保険料でしょ。
そう考えると、キャッチフレーズでは、
有効な訴求点が実は限られていることも

 

◆ターゲットに沿って

本課題のターゲットを確認しておきます。

収納の少ない部屋に住んでいて、
新しいもの・ことに敏感な20~30代

課題の主文言に書かれている以上は、
これに沿って考えるべきでしょう。
オリエンにも指定されていますしね。

使いたくなるかどうかだけで言えば、
それ以外の需要もあるはずですし、
オリエンにある「布団」なんかだと、
むしろ家族向けっぽいとはいえ。

 

◆シナリオを考える

誰が、何を、いつ、どんな気持ちで、という、
具体的なシナリオをどれだけ考えられるか。
現実的には、料金の事も考えておきたい。
これは、数を出すことの価値が高い課題
私は、各課題1本ずつですが・・・。

 

◆具体性のレベルの選択

「具体的な用途」は、どの程度具体的に?

一次審査通過作品の一般的傾向として、
無駄に具体性が高すぎる気がしています。
バリエーションが出しやすいからかな。
審査員選出賞にしても協賛企業賞にしても、
受賞作は一般性がより高いものの方が多い

受け手に直接ヒットする具体例ならいい。
が、「具体例→一般論→自分事化」よりは、
途中の一般論を提示した方がよさそうな。

この好例が、前回の中高生部門の受賞作に。

 私を変えたあの記事は、
 今でも壁に貼ってある。
 (読売中高生新聞)

実際の広告にも使用された秀作です。
この例で言えば、「あの記事」の部分。
ここを妙に具体的にしちゃう人が多い。
この例では、「あの記事」だからこそ、
受け手が自分を投影しやすいのでは。
そういう場合も、かなり多いと思います。

もちろん、適切なレベルは課題次第
ちゃんと意図があって選択しているか。

 

◆本課題では・・・

上記の例と比較すると、この課題では、
もっと具体的な例の方がよさそうかな。
「あの記事」が何か、と比較すると、
「このサービスで何を保管するか」は、
ある程度まで具体性のレベルを上げても、
同じだったり類似性が高かったりしそう
チャンネルも、デジタルを想定しては。
スマホを使うサービスでもありますし。
その前提で具体性のレベルを選択したい。

例えば、「夏のスキーウェア・用具」なら?
デジタルならターゲット数は十分でしょう。
「季節性の趣味」とかに一般化しなくても。

増えすぎた本・CD・DVD等なら?
タイトルとかまで具体化する効果は?
うーん、これは狙いによりけりかな。
例えば、『君の名は。』を入れれば、
時間の経過をイメージしやすくはなる。
でも、1本だけなら自宅でもいいし。
あ、シリーズものならいいのかな?
例えば、デアゴスティーニなら、
分量をイメージしやすくなるとか。
あれ、そういう効果を抜きにしても、
これは直接ヒットを狙えるのかな。
コンプリートしたがる人が多そうだし、
後で置き場に困る人も多そうで(笑)。

ちなみに、具体例絡みのことば遊びは、
焦点がぼけて逆効果になりがち。

具体化しにくいものもありますよね。
例えば、「思い出の品」なんかはそう。
この場合は、無理に具体化しなくても。
これは、読売中高生新聞の場合と同じ。

・・・とまあ、こんな感じで個別的に、
適切なレベルを考えるしかなさそう。

 

次回は、「15.沢井製薬」。