宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 30.伝統的工芸品産業振興協会

「課題分析シリーズ」、第30回は、伝統的工芸品産業振興協会

 

◆「伝統は大事だから」ではなくて・・・

「価値があるから価値がある」みたいな、
そういう同語反復に陥らないように注意。
あくまでも、使う側のベネフィットを。

もちろん、伝統がなくなるのは惜しい。
一度なくなれば、再興は困難でしょうし。
学芸員的(?)観点も分からなくはない。
が、せっかくの一般公募の賞ですから、
一般の消費者目線で考えることを優先

 

◆何が変わるか

伝統的工芸品を使うことで変わることは、
主に日常生活の風景や習慣でしょうか。
それから、それが心理に与える影響も。
その辺りを想像させるものが中心かな。

 

◆指定品と非指定品の区別

指定されるための要件がある以上は、
本来はここの区別はあった方がいい。
ただ、両者の価値に明確な境界はない。
今後新たに指定されるものもあるはず。
指定の有無そのものが問題ではなくて、
「指定品により相応しい」ぐらいで。

指定品は、どこにでもあるわけじゃない。
単なる「昔ながら」ではない特別感を。

 

◆具体例か一般論か

出題企業は、一般性を求めているのでは。
立場上、特定の品目を推すのは避けそう。
ただ、一般論でも効かなきゃ無意味だし、
具体例でも受け手が一般化できればいい。

 

◆一般論なら・・・

一般論は、シズルに期待してみたい。
説得型は、指摘としては正しくても、
私には人が動くイメージが湧きません。

 

◆具体例なら・・・

まず、多くの人が日常で使うものを。
「美術品」に近いものもありますが、
それだと「特別なもの」になりすぎる。
かなり値段が張るものもありますしね。
「青山スクエア」に行ってみましたが、
10万円超はざらにありました・・・。

そう考えると、実は選択肢は多くない。
最も常識的な例は、食器でしょうね。
これなら、伝える価値の中身次第では、
他の品目まで一般化してもらえるかも。

「青山スクエア」の他の展示品では、
気軽に買える値段のものに限ると、
和紙やハンカチやブックカバーぐらい。
うーん、受け手が一般化しにくいか。
まあ、一点突破でもきっかけになれば
出題企業は選びにくいとは思うけど。

 

◆そのものの効果を

宣伝会議賞では、「これを使うと素敵」が、
「素敵になるとこんなことが」になりがち。
「どう素敵か」の解像度を上げることなく、
一般的な自慢話のバリエーションに走る。

伝統工芸品の価値ある使用感そのものを
そこからあれこれ派生しすぎない方が。
使用する価値がイメージしにくいわけだし。
「落ち着く」なら、それ自体を最高に。
「仕事のミスが減った」みたいな作り話は、
一般性や蓋然性が低くなるだけなのでは。

 

◆ちなみに・・・

本課題を見た瞬間、なぜか既視感が・・・
その原因は、前回のマネックス証券と判明。
クリエイティブ(?)の方向性が完全一致。
同じチームが作っているとしか思えません。

トレーダーだろうが伝統的工芸品だろうが、
決してブレることのない独自の世界観

今、宣伝会議賞に、新たな伝統的工芸品
いや、伝統芸能が、生まれつつある・・・。

 

次回は、「31.東急建設」。