宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 33.東洋紡

「課題分析シリーズ」、第33回は、東洋紡

 

◆・・・で、何が違うの?

「何が違うか、教えてください。」
ほとんどの人は、そう思ったでしょう。

実は、この問いに対する答え自体は、
企業ウェブサイトで明示されています。

 東洋紡は135年の歴史の中で繊維から化学へ変化し、
 「重合」、「変性」、「加工」、「バイオ」
 というコア技術を生み出しました。
 見た目は「繊維の会社」ですが、
 中身は繊維から派生した技術から、
 多くの事業を展開しています。

 (http://www.toyobo.co.jp/recruit/special/)

これをどう伝えるか、が課題ということに。
「バナナフィッシュ」のバリエーションとか、
「違う」そのものを伝えるんじゃなくて。

 

◆・・・で、何が心残りなの?

謎のオリエン、こっちはいまだに意味不明。

 

◆企業全体か個別事例か

この点については明示的な指定はありませんが、
出題企業側は企業全体を想定しているような。

ただ難題ですし、効く可能性ありならなんでも。
入口さえ作れれば、あとは何とでもなりそう。

 

◆企業全体の場合

この場合、「何が違うか」をおもしろく
ただ、「重合・変性・加工・バイオ」は、
キャッチフレーズの容量には収まりきれず、
ボディーに入れると想定せざるを得ない。

キャッチだけで完結しなくてもいいと思う。
だったら、「繊維だけじゃない」もあり。

 

◆個別事例の場合

この場合、「見た目」との違いの扱いは?
「繊維」のイメージが元々あるとすれば、
それ自体に言及する必要はないのでは。
「中身」の方さえ魅力的に提示できれば
必要なら、「えっ、あの東洋紡が?」とか、
ちょっとフレーズを足せば成立しそう。
大した工夫を要しない部分は、後付け可。

また、単なる事例紹介では提案価値がない。
企業自身が選んで普通に紹介すればいい。
受け手に関心を持ってもらえるかが問題で、
中身の説明はボディーでやるつもりでいい。

世の中の広告に埋もれないことを意識したい。
他の応募者と違う事例ならいいわけじゃなく。

 

◆サービス精神を

他の複数の企業広告の課題の分析でも書いた通り、
ベネフィットがなくても読んでもらえる工夫を。
「いいことやってます」は、背景色にすぎない。

 

◆もっと「単独で分かる必要」問題

課題8や課題10の分析で検討した論点。

審査員も含め、広告の受け手の多くは、
この企業の「中身」を知らないでしょう。
企業が望む程度まで知ってもらうことが、
短いキャッチフレーズだけで可能なのか?
他のパーツとセットで機能する枠組みを、
キャッチフレーズと作品意図で、の方が、
実用的には価値があると思うのですが。

単独では分からないが、続きを読みたい。
普通に言えばいいことは、そこで言う。
結果として、謎が解けて記憶に残る。
キャッチが「フック」として機能する

「今時そんな広告は読まれない」、
みたいな議論もありそうだけど、
「それでも読まれるように作る」
ことも必要なんじゃないかな。
探してでも読まれるコンテンツ、
広告以外にはいろいろあるでしょ。
コピーライターの力不足なのでは。
方法が時代に合わないのではなくて。

キャッチフレーズだけで機能すれば理想。
が、それが無理な課題もあるんじゃない?
その場合に、課題を矮小化してほしくない

単独で分かっても、機能しなきゃ無意味。
広告の背景色と同化したコピーだって、
読まれていないか、読まれても無効。

「それでいいなら協賛金を出す意味は?」
という結果になりませんように・・・。

 

次回は、「34.トクヤマデンタル」。