宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 13.さくらインターネット

「課題分析シリーズ」、第13回は、さくらインターネット

 

◆サービスの概要とプランごとの違い

まずは、サービスの概要を一言で言えば、
それなりのホームページやブログなどを、
比較的安く簡単に作れるサービス、かな。

無料ブログよりは体裁に工夫ができて、
別料金だけど独自ドメインも使えて、
プランによっては高度なカスタマイズも。

次に、プランごとの違いをどう考えるか。
とりあえず、「ライト」「スタンダード」
この2つを意識しておけばよいと思います。
「スタンダード」でも基本的な機能があり、
上位のプランは数字が大きくなるだけなので。

「ライト」は、無料ブログよりはかなりいい
そんなサイトを安く簡単に運営できる感じ。

「スタンダード」は、独自性重視の人向け。
ビジネス用の高度な機能を求める人にも。
活用には、ある程度の知識と意欲が必要か。
WordPress」がどういうものかについては、
次にあげるウェブページが参考になります。

https://saruwakakun.com/html-css/wordpress/whatis-wp
https://imitsu.jp/matome/hp-design/1301231075952029

「広告が入らない」もあるかもしれない。
ただ、これは普通に言えばいいと思う。
宣伝会議賞で評価されるものじゃなくて。
広告をうっとうしく感じるような人に、
わざわざひねった広告を出してもねえ。

 

◆ターゲット

・無料ブログに満足していない人
 高度なものを作りたいわけじゃないけど、
 もうちょっと体裁にこだわりたい人とか、
 ホームページも作ってみたい人とか。

・充実したサイトを作りたい人
 ブログやホームページにこだわりたいけど、
 でも自分でサーバを運用するのは面倒な人。

・自分でサーバを運用している人
 独自性を求めて自分で運用しているけど、
 機能充実ならレンタルでも、という人。

この区別は、頭の中で整理しておきたい。
なんとなく合っていそうで実は的外れな、
そんなものを作ってしまわないように。
分けなくても成立するものもあるとしても。

 

◆「サーバが壊れた」は妥当なのか?

宣伝会議賞では、サーバが絡むと無条件に、
サーバが壊れる話を作りたがる人がいます。
この課題の場合、それは妥当なのかを、
上記のターゲットとの関係で考えます。

まず、無料ブログに満足していない人。
無料ブログでも、バックアップも含めて、
ちゃんとメンテナンスはされているはず
そうじゃなきゃ利用者が減ってしまうし、
結果的に広告収入も減ってしまうでしょ。
大問題になるほどの故障はほぼ起きないし、
有料サービスでも確率はさほど変わらない。
故障確率を訴求点にするなら、データを。

次に、充実したサイトを作りたい人。
この場合は、壊れるとか壊れないとか、
そんなレベルの低い話をされても困る。
壊れない前提で何ができるかが問題

最後に、自分でサーバを運用している人。
これはそもそも、知識がある人でしょ。
バックアップぐらいは当然しているはず
やっていなかった状況を描いても無効。
復旧作業の面倒さを描くならまだしも。
でも、面倒さも分かった上での選択では。
レンタルサーバの存在も知っているはず。

一般論として、サーバが壊れることはある。
でも、実はこの課題とはほぼ無関係なのです。

 

◆「貞子問題」

ここで突然、話は別の事例に飛びます。
第54回の、パナソニックの課題です。
サーバが絡めば「壊れた」と同じくらい、
髪が絡めば「貞子」も多いと分かります。

でも、「貞子」は明らかに問題ですよ。
ターゲットは、貞子みたいな人なの?
それとも、そうじゃないターゲットと、
一緒になって貞子をバカにしているの?
的外れ、及び/又は、デリカシーがない

ただ、この事例をもう少し一般化すれば、
問題の違う捉え方が見えてくるのです。

 

◆現在地から目的地へ

「コピーとは何か」と問われたとしたら、
「人を現在地から目的地に動かすことば」
みたいなことを私は答えると思います。
例えば、2次元座標を想像して考えると、
原点が現在地、第1象限のどこかが目的地、
コピーは両点を結ぶベクトルのイメージ。

一方、宣伝会議賞の作品の傾向としては、
現在地を第3象限に置きたがるんですよ。
課題に関する現状を実際より低く評価し、
使用前後の違いを伝えているつもりだが、
わざわざ後退して現在地に戻るだけで、
実際の現状からは進めていない感じの。

上記の事例で言えば、ターゲットの多くは、
「壊れた」とか「貞子」とか言われても、
それは現状を恣意的に悪く描いただけで、
自分には関係ないことだと思ってしまう。
または、自分を低く見られていると感じる。

現状をポジティブに変える力の不足を、
受け手の現状を貶めることで補う愚行。
作る側はそっちの方が簡単なんですよ。
架空の問題をでっちあげるだけでいいし。

まだない状況や価値を描くのは難しい。
「○○ではない」じゃ伝わらないことも。
「いま・ここ」に埋没しちゃった方が、
コピー単独で分かりやすくなりますし。
でも、それでは課題解決にはならない

レンタルサーバーとドライヤーという、
まったく違うジャンルの課題であっても、
こんな共通する問題が読み取れることも。

 

次回は、「14.サマリー」。