宣伝会議賞の哲学

宣伝会議賞を通して、コピーライティングのあるべき姿を考えていきます。

第56回宣伝会議賞 課題分析 46.FIXER

「課題分析シリーズ」、第46回は、FIXER

 

◆ボーっと生きてんじゃねーよ!

今回の課題に入る前に、まずはここから。
同社の前回の課題の一次審査結果について。

前回のオリエンのポイント2からの引用。

 企業におけるクラウド利用はもはや当たり前の選択となり、
 これからはビジネス競争力を強化する戦略的なIT利用が求められています。

ところが、一次審査通過作品の多くは、
クラウドを導入しよう」みたいな話。
特に残業をテーマにしたものが多いけど、
課題の趣旨からは明らかに外れています

前々回の協賛企業賞受賞作の影響なのか。
でも、そもそもあの作品の選出ポイントは、
「残業」より「世界のスピード」でしょ。
むしろ、「残業」を持ち出したことで、
やや焦点がぼやけてしまった感すらある。

さらに、私を最上級にあきれさせたのが、
「サーバが壊れて株価が下落した」話。
これも「クラウドを導入しよう」でしょ。

それに、株価云々ってことは、上場企業。
多くの場合、一定のレベルを期待していい。
自社運用ならそれなりの理由があるはずで、
ちゃんと専門の人が保守もやっているはず。
そういう人に向けてリスクを語るとすれば、
それなりの言い方ってもんがあるでしょ。

例外的にレベルの低い企業があっても、
そういう企業が導入すべきサービスは、
cloud.configみたいな高度なものより、
最低限の機能だけのものではないのか。

いったい何重に間違えば気が済むんですか?

サービスの価値を最大化するどころか、
猛烈に毀損しているじゃないですか!

この状況が続けば、応募者や審査員だけでなく、
そんなものを堂々と出版している宣伝会議や、
放置している出題企業の良識を問われかねない。
少なくとも、私はそこを問い質したいです。

 

◆「クラウドエンジニア」とは?

さて、ようやく今回の課題に入ります。

クラウドエンジニア」って、どんな人?
クラウド技術自体を開発する人」ではなく、
クラウドを活用してサービスを構築する人」
少なくとも基本的には、そういうことのはず。

オリエンのポイント3の文言とも合致します。

 これからの社会基盤を担うクラウド
 最先端のテクノロジーを駆使して、
 新たな価値を生み出す「クラウドエンジニア」

まずは、ここを誤解しないことが大前提。

 

◆ターゲットは?

「日本のなりたい職業ランキング第一位」って、
どういう母集団を想定しているのでしょうか?
その母集団が広告のターゲットと思われますが、
正直、いまひとつピンと来ないのですよ・・・。

小学生に向けて推す職業ではないですよね。
となると、志望職種が未定の学生たちかな。
オリエンの「若者」という表現にも合うし。
ただこれだと、志は高いけれど、超難題。
間口の広さと圧倒的魅力の両立が必要か。
人材の需要がある職種だとは思いますが、
「需要がある=なりたい」ではないですし。

では、IT系エンジニアを目指す人とすると?
この方が受け手の理解力には期待できるけど、
その中での「第一位」では見掛け倒しのような。

本来は、若者一般と解釈すべきでしょうが、
出題企業の本気度はどうなのでしょうか?

 

◆広告クリエイターとの共通性

「かっこいい」や「自由で創造的」という、
オリエンのポイント3の文言から考えると、
出題企業が伝えたい職種イメージの核心は、
「鮮やかに課題を解決する」ことなのでは。
その意味では、広告クリエーターに近い。
材料がアイデアクラウドかの違いだけで。
若者一般に憧れてもらうヒントになるかも
あ、社会一般にうさんくさく思われないよう。

 

◆「第一位になる」ことを目指すなら・・・

もし、一次審査通過作品の多くが的外れなら、
出題企業は何らかのアクションを起こすべし
じゃなきゃ、「第一位」の本気度が疑われる。

「メッセージ」を伝えることで人を動かす
その手段はいわゆる「コピー」だけじゃない。
その他のことばや行動だって、立派な手段。
「コピー」だけがどんなに素晴らしくても、
発信される「メッセージ」に一貫性がないと、
目的を達成する意志があるかさえ疑わしい。
それでは、人は動かないんじゃないかな。
「コピー」そのものが目的ではないでしょ。

私が考える「コピーライティング」の定義は、
「ことばを中心としたメッセージの最適化」
狭義の意味での「コピーライター」の仕事は、
「広告コピーを書くこと」なのだとしても、
限定するのは、ばかばかしいし、もったいない。
ポジティブなものもネガティブなものも含め、
その他の「メッセージ」にも鋭敏でありたい。

 

次回は、「47.富士通」。